2010年11月29日月曜日

2人のデービット

11月29日

今日がチームメートのアブダビへ向けての出発日。
その場にいられないのが悔しすぎる。

そういえば先日監督の方から連絡があり、自分を連れて行けるように未だに交渉してくれているみたい。本当に涙が出ます。
万が一ってこともあるだろうし、コンディションだけは整えておかないと。

女社長に言われたい放題のあの晩、
絶望感に溢れ、もう帰ろうと思った自分を踏みとどまらせてくれたのはこういった仲間との友情と声援、そして皆さんの応援です。

僕が女社長との話を終え部屋に戻るとまずはキャプテンのデービットが入ってきました。
とっても悲しそうな顔で、しばらく座って何も話しませんでした。

俺が落ち込んでいたから話しづらかったんだと思います。
でも少しすると、一言すまなかったと。

彼女の前で自分をかばえなかったこと、
チーム全員を代表して俺にお詫びしたいと。
チームのためを思って発言してくれたのがこんな大惨事を招いてしまって、チームメートは全員申し訳ないと思っていると。

マネージメントには伝わらなくても、
チームは感謝しているし、俺を必要としてくれているから心を折られず最後まで二枠入り目指してがんばってほしいと。

そんな彼の言葉を聞いてまたまた涙・・・

パプアニューギニア人を始めとするメラネシア人は本当に仲間意識が強い。

「よそ者」の俺でさえ最初っから「兄弟、兄弟」って接してくれて、本当に暖かく迎え入れてくれた。

乱闘事件に巻き込まれた時も体を張って大けがをしながらも俺を守ってくれていました。

頭に大けがをおってまで自分を守ってくれたデービット
彼らがいたからこそ自分もがんばれたし、
毎日を前向きに楽しく彼らと笑って過ごせたんだと思います。

そして何よりも少しずつもう一度がんばろうと言う気持ちにさせてくれました。

デービットが出て行くと次々と選手達が。
仲良くしてたソロモン人のワロイ、メラ、レックスは信じられないと慰めに来てくれました。

そして最後に訪れたのが同じくソロモン人のデービット・タロウ。
彼とはこのチーム内ではポジションが一緒ってこともあり、最初っから良く絡んでいたんだけど、この晩から一気にチーム1の親友になりました。

俺の部屋へ来て腰をかけたデービットに伝えたいことがあると打ち明けられました。

夕飯の支度をするデービット。魚解体中。
「お前がメンバーから外れたから俺は辞退した。」

最初は彼が言っている意味が分かりませんでした。
すると、彼は監督と女社長に自分はアブダビへ行かないことを告げたと言いました。

常にレギュラーで出場していた彼がなぜそんな決断をしたのかと聞くと、
俺をメンバーに復帰させるためだと。

同じポジションの彼が外れれば俺が招集されるはず。
そして軽傷を負っている彼よりも自分の方がチームの役に立つと。

悔しいけど今はお前の方が上、だからお前が代わりにアブダビへ行ってヘカリユナイテッドを勝利に導いてくれと・・・

いろんな国でサッカーしてきて、
いろんなやつと出会い、
いろんな仲間ができましたが、
こんなことをする選手は初めてです。

普通理由がなんであれクラブワールドカップのようなビッグイベントへの出場機会をみすみす逃す選手はいないと思う。
ましては先発で出る可能性が高い選手。
一生に一度のチャンスかもしれない。
それを出会ったばかりの自分に譲るなんて。

大切なのはヘカリがオセアニア代表として成功を収めること。ベストメンバーで挑むべきだと。
チームが一番、個は二の次だと彼は言いました。

俺にそんな決断が出来たか?おそらく出来ないと思う。

彼の心の偉大さにただただ圧倒され、
涙が止まりませんでした。

そして彼に約束し、
自分にこう誓いました。

アブダビ行きの可能性がゼロになるまで自分は彼の分も必死で頑張ると。
それが彼にしてあげられる最低限の恩返し。

つづく

悠紀

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